【note:02】 マンガを学ぶ/マンガで学ぶ

リクルートが運営する進学情報サイト
【スタディサプリ進学】で調べてみたら
「漫画家を目指せる専門学校」は63校、
「漫画家を目指せる大学・短大」は24校もありました。
(2020年3月現在)

リクルート【スタディサプリ進学】
※【スタディサプリ進学】は、仕事や資格、業界や学問分野を調べたり、
  どんな大学や専門学校があるかを紹介するサイトです。

マンガ家をめざす人は、大学でいったい何を学んでいるのか?


ウィキペディアには「マンガ学科」の講義内容として、
マンガの歴史、表現法、分類法、保存学、実践理論・実技、
評論、翻訳、発想・構成法、読解、表現観察、雑誌編集…

といった項目が並んでいます。

言うまでもなく、学校でマンガを学んだからといって、
マンガ家になれるわけではありません。

一方、Benesseの進路進学応援サイト
【マナビジョン】には、こんな記事がありました。

<著名人の出身大>
マンガ家になるには美大に行ったほうがいい?

「手塚治虫文化賞マンガ大賞」、「マンガ大賞」、
「文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞」といった
有名なマンガ賞を受賞したマンガ家たちの
出身学校(最終学歴)の一覧が掲載されています。

Benesse【マナビジョン】
美術系の学校出身者が半数を占めていますが、
逆にいえば、美術とまったく関係ない学校の出身者も
半分を占めているということになります。


敬愛する先輩マンガ家の影響を受けたり、
"独学"で腕を磨いてきたということでしょうね。
当然ですが、学歴よりも実力の世界です。

別に、マンガ家をめざす人に限ることなく、
マンガを対象とする学問分野もあります。

大学などアカデミックな研究の場において
「マンガ」を手がかりに現代の社会や文化の構造を
分析しようとする試みがなされています。

富永京子先生(社会学)

立命館大学の富永京子先生は
おすすめ本の紹介サイト【ホンシェルジュ】で、
「マンガを社会学する!」という連載をしていて、
こんな話をされています。

まず、社会学はなにか?というのは難しい問いで、私なりに解釈するならば、社会で起こっているあらゆる事象を、自分なりに読み解く作法のようなものかな、と思います。
…(中略)…
漫画は、社会の見方を学ぶにあたって適したテキストだと思います。うまく言えないのですが、作者によって提示される物事の描き方や切り取り方が、「おお、これは社会学のこの理論に似ている!」と感じる瞬間があるのです。

連載では先生が「家族」、「労働」、「ジェンダー」、「権力」など、
さまざまな切り口からおすすめマンガを紹介しています。

「マンガを社会学する!」富永京子
◆宮本大人(ひろひと)先生(漫画史・表象文化論)

"アカデミック・ジャーナリズム"というスタンスで
信頼性の高い知識と情報を提供している
【SYNODOS(シノドス)】というサイトがあります。

その中の "高校生のための教養入門"というシリーズで
明治大学の宮本大人(ひろひと)先生が登場し、
マンガやアニメの表現を研究する意義を語っています。

感情の理屈を言語化する――漫画の何が
私たちを泣かせたり笑わせたりするのか

漫画史・表象文化論、宮本大人氏インタビュー
宮本先生は、こんな話をしています。

僕は漫画表現以外にアニメーション表現についての授業もしていますが、そこでも表象を読み解くことには意味がありますよね。ただ「面白かった」で済ますのではなく、なぜこの表現で自分は面白いと感じたのか、あるいはなぜここで泣いてしまったのかを表象から考えてみる。
…(中略)…
それは感情の理屈を言語化するという点でも意味があるのですが、もっと露骨にいえば、どうすれば自分はメディアによって感情を操られるのかを知るということでもあり、メディアリテラシーを鍛えるということでもあるわけです。

なかなか面白そうな授業ですね。
マンガだけでなく "自分"という人間についても
きっと理解が深まると思います。

たとえば、マンガについての解説をきっかけに、
ぼんやりと感じていたことがハッキリ言語化されたり
"あたりまえ"と思っていた常識がぐらついたり、
モノの見方や考え方が深まることだってあります。

もっとも、マンガやアニメはただの娯楽であり、
単なる消費活動だと考える向きも多いとは思いますが。

マンガを読むのに理屈はいらない。近頃は大学にマンガ学科ができたりして、マンガを学問的に研究しようという動きもあるが、学校の勉強から一番遠いところにあるのがマンガってものじゃないのか、と個人的に思ってしまう。
…(中略)…
良くも悪くも"しょせんマンガ"なんだから、ただ読んで、ただ面白ければ、それでいいのだ。

(『現代マンガの冒険者たち 大友克洋からオノ・ナツメまで』南信長)

好きなマンガについて語り合う楽しみもあるし、
マンガについて書かれた文章や本の中にも
面白いものはあるのですが...

いまの若者が置かれてる文化環境について、
こんな風に指摘している大学の先生もいます。

最近ではすべての情報をスマホの画面から得ていて、教科書や参考書以外の本を読んだことがないような学生たちが増えてきている。外から押し付けられた勉強以外には、ただで見ることのできる無料動画のアニメやアイドルだけが、彼らの癒しとなっているようで、多感な思春期に彼らを取り囲んできた文化環境がどんどん平板化・貧困化していることがわかる。
(室井尚(ひさし) 『文系学部解体』2015 )

マンガを読むのもメンドクサイ…、そんな若者も多いようです。