(No.002)
ボッコちゃん
星 新一 (ほし・しんいち)
新潮文庫(1971)
【文庫の紹介文】
スマートなユーモア、ユニークな着想、シャープな諷刺にあふれ、光り輝く小宇宙群!日本SFのパイオニア星新一のショートショート集。表題作品をはじめ「おーい でてこーい」「殺し屋ですのよ」「月の光」「暑さ」「不眠症」「ねらわれた星」「冬の蝶」「鏡」「親善キッス」「マネー・エイジ」「ゆきとどいた生活」「よごれている本」など、とても楽しく、ちょっぴりスリリングな自選50編。
【textより】

「名前は」
「ボッコちゃん」
「としは」
「まだ若いのよ」

「いくつなんだい」
「まだ若いのよ」

「だからさ…」
「まだ若いのよ」
    (「ボッコちゃん」)

すばらしく深い穴がありますよ。学者たちも、
少なくとも五千メートルはあると言っています。
原子炉のカスなんか捨てるのに、絶好でしょう。
(「おーい でてこーい」)
言葉など人間にはいらない。
言葉がどれほど愛情を薄めているだろうか 。
人びとは言葉なくして得た愛情を、
必ず言葉によって失っている。
                (「月の光」)
「おかしいぞ。やつらはあわてているが、
だれも死なないじゃないか。死なないどころか、
なかには、むしろ喜んでいるやつもいるようだ」
          (「ねらわれた星」)
 地球は、その表面の出来事にはおかまいなく回りつづけた。
                       (「最後の地球人」)
◆新潮文庫『ボッコちゃん』は、発行部数246万部のロングセラー
2017年(星新一のデビュー60年・没後20年)の時点で、
新潮文庫の星新一作品(全44点中)で『ボッコちゃん』が人気No.1。
第2位は『未来いそっぷ』174万部、第3位『悪魔のいる天国』160万部。
◆タイトル作品「ボッコちゃん」について
◎初出は、日本初のSF同人誌『宇宙塵(じん)』の1958(昭和33年)2月号。
 商業雑誌にも転載され、デビュー作「セキストラ」に続く星の出世作となった。
◎1963(昭和38)年、アメリカのSF雑誌に日本のSF作品として初めて英訳された。
【「ボッコちゃん」についての星新一のコメント】
◎「これは自分でも気に入っており、そのごのショート・ショートの原型でもある。自己にふさわしい作風を発見した。自分ではこの作を、すべての出発点と思っている。私の今日あるは『ボッコちゃん』のおかげである。」(『きまぐれ博物誌・続』)
◎「わが小説」(朝日新聞、昭和37年4月2日付)という随筆で新一は、「ボッコちゃん」には「私の持つすべてが、少しずつ含まれているようだ。気まぐれ残酷ナンセンスがかったユーモアちょっと詩的まがいなげやりなところ風刺寓話(ぐうわ)的なところなどの点である」と書いている。幼児逆行の現れだという指摘に対しては、「自分でもその通りと思う」と認め、分別ある大人ばかりの世の中で、自分ひとりぐらい地に足のついていない人間も必要だろうと確信犯であることを表明している。
(『星新一 一〇〇一話をつくった人』最相葉月)
【5つ星評価】
メンバー
感想・コメント
White
★★★★
一編一編が短いながらも不思議な物語を構築していて面白かった。本を読むのが苦手な私でも飽きずに読めたので★4つ! 気に入った作品は「暑さ」「約束」「生活維持省」「冬の蝶」「鏡」「月の光」など。とくに「月の光」の最初の段落と、最後の一文「ユリの花びらが一枚おちて、かすかな音をひびかせた。」が印象に残った。
Green
★★★

懐かしかった。新聞の日曜版に載っていた星新一のショートショートが毎週楽しみで、切りぬいていた中学生の頃なら、文句なしに★5つだけど、まとめていっき読みしたせいか、私が飽き性のせいか、昔のようにワクワクしない自分を発見してショック。全50作品ごとの★の数はさまざまで、平均してみると★3つくらいか。

Red(仮)
 
Yellow(仮)
 
『ボッコちゃん』に収録されている全50作品の
要約一覧(※ネタバレあり)はこちら→