(No.001)
チョコレートコスモス
恩田 陸(おんだ・りく)
角川文庫(2011)/単行本:毎日新聞社(2006)
【文庫の紹介文】
芝居の面白さには果てがない。一生かけても味わい尽くせない。華やかなオーラを身にまとい、天才の名をほしいままにする響子。大学で芝居を始めたばかりの華奢で地味な少女、飛鳥。二人の女優が挑んだのは、伝説の映画プロデューサー・芹澤が開く異色のオーディションだった。これは戦いなのだ。知りたい、あの舞台の暗がりの向こうに何があるのかを―。少女たちの才能が、熱となってぶつかりあう!興奮と感動の演劇ロマン。
【textより】
芝居は、「事件」であり、共有される「体験」なのだ。
わたくしが、忘れるとでもお思いになるの?
いったい何者なのだ、この子は。
何なの。今、何が起きたの?
芝居は役者と観客との
共犯関係によって成立するものなのだ。
【文庫の作者あとがきより】
(初めての週刊誌での連載が決まって…)そこで浮かんだのはあの国民的少女漫画、美内すずえ先生の『ガラスの仮面』。連載第一回からリアルタイムで読んできた私は、あのワクワク感を再現したいと思ったのだった。
【5つ星評価】
メンバー
感想・コメント
Green
★★★
まさに『ガラスの仮面』の世界!ここぞという芝居の見せ場では、“鳥肌が立つ”という表現が何度も繰り返され、まさかそんな…と思いつつも、ぐいぐい引き込まれてしまいました。エンタメ作品の本領である(ベタな?)展開がフツーに面白かった。(たぶん再読はしないと思うので、星は3つ)
Blue(仮)
Red(仮)
 
Yellow(仮)
 
【関連本の紹介】  “感動”をきっかけに、textからtextへ。
タイトルと著者
説明
『ハムレット』
W・シェイクスピア
(新潮文庫ほか)
「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」でおなじみのシェイクスピアの四大悲劇の一つ。『チョコレートコスモス』の中で、高校生の飛鳥は、響子の演じるオフィーリア役を見て感動し、演技に目覚める設定となっている。「その記念すべき晩、飛鳥は、東響子の台詞を全て、とうとう最後まで暗唱してしまった。」
『サキ短編集』
サキ
(新潮文庫)
サキはイギリスの作家(ちなみに男性)。この短編集には『チョコレートコスモス』の中でオーディションの一次選考の脚本に使われた作品「開いた窓」が収められている。恩田陸のエッセイによれば「裏O・ヘンリーとも言えるサキの持ち味は、明晰な語り口とあっと驚く切れ味鋭い幕切れだ。そのほとんどは、人生の残酷さと黒い笑いに彩られている」とのこと。

『欲望という名の電車』
テネシー・ウィリアムズ
(新潮文庫)

『チョコレートコスモス』の中で、二次選考に使われた演劇史に名高い戯曲(1948年ピューリッツァー賞を受賞)。アメリカ南部の名家に生まれた誇り高いヒロイン(ブランチ)が悲惨な境遇に落ち、精神が崩壊していくさまを描くへヴィーな物語。1951年、ヴィヴィアン・リーの主演によって映画化された。

『ガラスの仮面』
美内すずえ
(白泉社文庫)

『チョコレートコスモス』のあとがきで、恩田陸自身がオマージュを捧げている国民的少女マンガ。平凡な少女だった主人公・北島マヤが、かつての大女優・月影千草に見いだされ、ライバルの天才少女・姫川亜弓と競い合い、幻の作品「紅天女」を演じるために女優として成長していく姿を描く。(1976年から現在も継続中)
『ガラスの仮面』のワンシーンに、
『チョコレートコスモス』 の文章をあてはめてみた。→